双対性について
先月某日に立命京大合同セミナーに参加させていただき、Gelfand-Naimark双対性の話をしてきました。
前のRemakers合宿ではStone双対性にも触れまして色んな双対性をやる人みたいになってきたので双対性について思うところを書きます。
Stone双対性
完全不連結コンパクトハウスドルフな位相空間をStone空間といいます。Stone双対性はStone空間とブール代数の間の双対性です。
Stone空間の圏を,ブール代数の圏をと(今回は)書くことにします。このときとの間に圏同値を与える反変関手が存在します。
Stone→Bool
反変関手はStone空間に対してその開かつ閉集合全体の集合を対応させる関手です。
arrowの対応は連続写像に対してその引き戻しの写像をとします。
Bool→Stone
反変関手はブール代数に対してブール準同型全体の集合をとして返します。ここでは集合のことでこれは自然にブール代数となります。にはある方法で位相が入ってStone空間になります。
arrowの対応はブール準同型に対してという写像を返します。
これらの反変関手が実は圏同値を与えていることが確認できてStone空間とブール代数の双対性がわかります。
Gelfand-Naimark双対性
Gelfand-Naimark双対性はコンパクトハウスドルフ空間と単位的可換C*環の双対性です。Stone双対性のときと同様に考えるためコンパクトハウスドルフ空間の圏を,単位的可換C*環の圏をと書くこととします。ただしの射は単位元を保つ*-準同型です。
CpfHff→ucC*
反変関手はコンパクトハウスドルフ空間にそこ上の複素数値連続関数全体の集合を対応させます。
ucC*→CptHff
単位的可換C*環に対して0でない準同型をの指標といいます。反変関手は単位的可換C*環にその指標全体の集合を対応させます。にはweak *-topologyを入れてコンパクトハウスドルフ空間とみなします。
単位元を保つ*-準同型についてはという指標の引き戻し写像が対応します。
これらの反変関手がやはり実は圏同値を与えていることが確認でき,コンパクトハウスドルフ空間と単位的可換C*環の双対性がわかります。
考察
さて,ここまでStone双対性とGelfand-Naimark双対性の大雑把な流れを見てきました。どちらも2つの圏の間に反変関手が生えて圏同値を与えるという主張になっています。これらの双対性についてもう少し考察してみましょう。
Stone双対性再考
反変関手はブール準同型全体の集合をとる関手でした。これは圏論の言葉を使えばと書けます。
反変関手は開かつ閉集合全体の集合をとる関手ですが位相空間の開かつ閉集合は離散位相空間への連続写像とにより一対一に対応します。すると開かつ閉集合全体の集合は連続写像全体の集合と同一視できてと見なせます。
まとめると,となり2つの反変関手はどちらもHom関手になっています。
Gelfand-Naimark双対性再考
同様の考察をすると反変関手はとなっていることがわかります。はコンパクトではないのでHomを考えるカテゴリーが位相空間の圏になっています。
また単位的可換C*環における指標の定義は0でない準同型ですがこれから指標は単位元を保つ*-準同型であることがわかります。よって指標とはのarrowのことでと書けます。
まとめると,となりやはり2つの反変関手は(考える圏の違いはあるものの)Hom関手になっています。
双対性について
以上の再考からStone双対性・Gelfand-Naimark双対性の例では適当な対象におけるHom関手が反変圏同値を与えていることがわかります。Stone双対ではをブール代数とも位相空間とも見てそれぞれの見方でHom関手を考え,Gelfand-Naimark双対ではを位相空間やC*環とみてそれぞれHom関手を考えました。
さらに今回は詳しくは説明しませんでしたがブール代数に対するの位相や単位的可換C*環に対するの位相はどちらもスペクトルのザリスキ位相に関係します。可換環論やらねば…
対してやの演算は点ごとに定義することで得られます。については集合演算なので少々非自明ですがという同一視に従って計算すれば確認できます。
以上のようにStone双対とGelfand-Naimark双対にはいくらかの類似性がみられます。これをうまく一般化できたりするんですかね?うまい対象をとってそこへのHomsetにいい感じの構造が入れば圏同値が見えるみたいな…?米田の補題なんかも圏の圏でへのHomsetを考えるという意味では近い話な気がしてますが… でも反変関手だけHomをとる圏がずれてるのが気になりますね。
なんにせよHom関手とかザリスキ位相とかkernelとかpointwise演算とかそのあたりが双対性では重要なキーワードになるのかもしれません。