ちょーさんメモ出張版 気まぐれブログ

ちょーさん(@cho_san111000)のブログです。数学やその他のことを書きます。更新頻度はちょーさんの気分次第です。

双対性について

先月某日に立命京大合同セミナーに参加させていただき、Gelfand-Naimark双対性の話をしてきました。

前のRemakers合宿ではStone双対性にも触れまして色んな双対性をやる人みたいになってきたので双対性について思うところを書きます。

 

 

Stone双対性

完全不連結コンパクトハウスドルフな位相空間をStone空間といいます。Stone双対性はStone空間とブール代数の間の双対性です。

Stone空間の圏をStoneブール代数の圏をBoolと(今回は)書くことにします。このときStoneBoolの間に圏同値を与える反変関手が存在します。

Stone→Bool

反変関手clop\colon Stone \to BoolはStone空間Xに対してその開かつ閉集合全体の集合clop(X)を対応させる関手です。

arrowの対応は連続写像f \colon X \to Yに対してその引き戻しの写像clop(f) \colon clop(Y) \to clop(X)とします。

Bool→Stone

反変関手Spec \colon Bool \to Stoneブール代数Bに対してブール準同型B \to 2全体の集合をSpec(B)として返します。ここで2は集合2=\{0,1\}のことでこれは自然にブール代数となります。Spec(B)にはある方法で位相が入ってStone空間になります。

arrowの対応はブール準同型f \colon A \to Bに対してv \mapsto v\circ fという写像Spec(f) \colon Spec(B) \to Spec(A)を返します。

 

これらの反変関手clop,Specが実は圏同値を与えていることが確認できてStone空間とブール代数の双対性がわかります。

 

Gelfand-Naimark双対性

Gelfand-Naimark双対性はコンパクトハウスドルフ空間と単位的可換C*環の双対性です。Stone双対性のときと同様に考えるためコンパクトハウスドルフ空間の圏をCptHff,単位的可換C*環の圏をucC^\astと書くこととします。ただしucC^\astの射は単位元を保つ*-準同型です。

CpfHff→ucC*

反変関手C \colon CptHff \to ucC^\astはコンパクトハウスドルフ空間Xにそこ上の複素数値連続関数全体の集合C(X)を対応させます。

連続写像f \colon X\to YにはY上の関数をfX上に引き戻す写像C(f) \colon C(Y) \to C(X)を対応させます。

ucC*→CptHff

単位的可換C*環Aに対して0でない準同型A\to\mathbb{C}Aの指標といいます。反変関手\Omega\colon ucC^\ast\to CptHffは単位的可換C*環Aにその指標全体の集合\Omega(A)を対応させます。\Omega(A)にはweak *-topologyを入れてコンパクトハウスドルフ空間とみなします。

単位元を保つ*-準同型\phi\colon A\to Bについては\tau\mapsto\tau\circ\phiという指標の引き戻し写像\Omega(\phi)\colon\Omega(B)\to\Omega(A)が対応します。

 

これらの反変関手C,\Omegaがやはり実は圏同値を与えていることが確認でき,コンパクトハウスドルフ空間と単位的可換C*環の双対性がわかります。

 

考察

さて,ここまでStone双対性とGelfand-Naimark双対性の大雑把な流れを見てきました。どちらも2つの圏の間に反変関手が生えて圏同値を与えるという主張になっています。これらの双対性についてもう少し考察してみましょう。

Stone双対性再考

反変関手Spec \colon Bool \to Stoneはブール準同型B \to 2全体の集合をとる関手でした。これは圏論の言葉を使えばSpec=Hom_{Bool}(-,2)と書けます。

反変関手clop\colon Stone \to Boolは開かつ閉集合全体の集合をとる関手ですが位相空間Xの開かつ閉集合Uは離散位相空間2への連続写像f\colon X\to2U=f^{-1}(0)により一対一に対応します。すると開かつ閉集合全体の集合clop(X)連続写像全体の集合Hom_{Stone}(X,2)と同一視できてclop=Hom_{Stone}(-,2)と見なせます。

まとめるとSpec=Hom_{Bool}(-,2)clop=Hom_{Stone}(-,2)となり2つの反変関手はどちらもHom関手になっています。

Gelfand-Naimark双対性再考

同様の考察をすると反変関手C \colon CptHff \to ucC^\astC=Hom_{Top}(-,\mathbb{C})となっていることがわかります。\mathbb{C}はコンパクトではないのでHomを考えるカテゴリーが位相空間の圏Topになっています。

また単位的可換C*環における指標の定義は0でない準同型ですがこれから指標は単位元を保つ*-準同型であることがわかります。よって指標とはucC^\astのarrowのことで\Omega=Hom_{ucC^\ast}(-,\mathbb{C})と書けます。

まとめるとC=Hom_{Top}(-,\mathbb{C})\Omega=Hom_{ucC^\ast}(-,\mathbb{C})となりやはり2つの反変関手は(考える圏の違いはあるものの)Hom関手になっています。

双対性について

以上の再考からStone双対性・Gelfand-Naimark双対性の例では適当な対象におけるHom関手が反変圏同値を与えていることがわかります。Stone双対では2ブール代数とも位相空間とも見てそれぞれの見方でHom関手を考え,Gelfand-Naimark双対では\mathbb{C}位相空間やC*環とみてそれぞれHom関手を考えました。

さらに今回は詳しくは説明しませんでしたがブール代数Bに対するSpec(B)の位相や単位的可換C*環Aに対する\Omega(A)の位相はどちらもスペクトルのザリスキ位相に関係します。可換環論やらねば…

対してclop(X)=Hom_{Stone}(X,2)C(X)=Hom_{Top}(X,\mathbb{C})の演算は点ごとに定義することで得られます。clop(X)については集合演算なので少々非自明ですがU=f^{-1}(0)という同一視に従って計算すれば確認できます。

以上のようにStone双対とGelfand-Naimark双対にはいくらかの類似性がみられます。これをうまく一般化できたりするんですかね?うまい対象をとってそこへのHomsetにいい感じの構造が入れば圏同値が見えるみたいな…?米田の補題なんかも圏の圏でSetへのHomsetを考えるという意味では近い話な気がしてますが… でも反変関手CだけHomをとる圏がずれてるのが気になりますね。

なんにせよHom関手とかザリスキ位相とかkernelとかpointwise演算とかそのあたりが双対性では重要なキーワードになるのかもしれません。