ちょーさんメモ出張版 気まぐれブログ

ちょーさん(@cho_san111000)のブログです。数学やその他のことを書きます。更新頻度はちょーさんの気分次第です。

位相空間上のフィルターの収束

先日位相空間論におけるフィルターの話をpdfにまとめてTwitterに投稿しました

詳しい証明などは上のpdf(以下上の記事)に書いたのでここでは簡単な紹介だけしようかと思います。

フィルターとは位相空間論における「点列」を(ある意味で)一般化した概念で題にあるとおりフィルターの収束というものが位相空間において定義できます。

一般の位相空間では点列収束の一意性とハウスドルフ性や点列コンパクト性とコンパクト性などの条件は微妙に差がありますが、これの点列のところをフィルターに変えるとなんとこれらは同値になります!フィルターすげえ!!というのが上の記事の主題になります。

また上の記事ではその応用としてフィルターを用いてチコノフの定理を証明しています。この証明もフィルターを使えばずいぶんシンプルになるのでフィルター強ええ!!!というのがわかります。

 

もう少し具体的な話をしましょう。位相空間{ X }上の点列{ \{x_n\} }が点{ x\in X }に収束することの定義は以下の通りでした。

 \forall U \in\mathfrak{N}(x)\ \exists N\in\mathbb{N}\ \forall n\in\mathbb{N}\ \ n\geq N \Rightarrow x_n\in U

ただし \mathfrak{N}(x) xの近傍系です。

ここで F_N=\{x_n\mid n\geq N\} とおいてみましょう。すると上の収束の定義は次のように書き換えられます。

 \forall U\in\mathfrak{N}(x)\ \exists N\in\mathbb{N}\ \ F_N\subset U

これがフィルターで書いた場合の収束であり、上の記事の中でいう命題2.3です。つまりフィルター基底 \mathfrak{B}=\{F_N\mid N\in\mathbb{N}\} の収束をみているわけです。

このように点列の収束は集合の包含関係で書き換えられます。さらにこの形で書けば F_N が点列である必要すらなくね?という発想に至りこれを一般の集合で書き直すことでフィルターの定義にたどり着きます。

(この辺りの「具体的な抽象化の過程」は上の記事では触れなかったのでここで書いておくことにしました。)

 

フィルターの感覚はだいたいそんな感じです。こうして定義されたフィルターを用いると最初に書いたような強い結果が色々得られるのですがその辺の詳しいところは上の記事を見てください。

今回なぜ自分が上の記事を書いたかというとフィルターについての初等的な文献があまりないような気がしたからです。それでTwitterで「フィルターのpdf書いたら需要ある?」みたいなツイートをしてみたら思ったより反応があったので書くことにしました。

実際、自分がフィルターについて勉強したいと思ったときもどの本に載っているのかわからず、適当な位相空間の本を開いてみるも見つからず、結局大学の本棚にあったブルバキを読んで勉強しました。

記事内では参考文献を6冊ほど挙げていますがそのうちフィルターについてまともに載っている本は2冊だけです。

森田先生の位相空間と内田位相は位相空間論の参考にしただけでフィルターは出てきませんし、松坂位相でも演習問題で一瞬でてくるだけでしたし、位相のこころでは説明がされてますがこれは読み物なので証明などは詳しくされていません。また論理と位相ではフィルターについて扱われていますがこれは順序集合におけるフィルターの話(束論での扱い)なので位相空間上での収束などは書かれていませんでした。

要するに上の記事はほとんどブルバキを参考に書かれています。「クセがある」と名高いブルバキの内容を現代的な記法で書き直し、チコノフの定理を焦点にまとめ直しました。

解析系や幾何系に進んでいるとフィルターはメジャーな道具のように思う(?)のですがどうも文献が少ないです。もしフィルターの平易な文献があれば教えてもらえると嬉しいです。