ちょーさんメモ出張版 気まぐれブログ

ちょーさん(@cho_san111000)のブログです。数学やその他のことを書きます。更新頻度はちょーさんの気分次第です。

沼津で聖地巡礼してきた話

先日、沼津へ聖地巡礼に行ってきました。そのときのことについてまとめます。

 

まず聖地巡礼することになった経緯について簡単に。前回の記事で触れたように数物合宿に参加したのですがその集合・解散場所がJR三島駅沼津駅の隣の駅でした。沼津といえばラブライブサンシャインの聖地。これは巡礼してくるしかねえなと思い合宿のあと沼津へ行くことにしました。

以下でその結果を当時のツイートとともにまとめておきます。

 

沼津駅到着

三島駅から一駅電車に乗って沼津駅到着です。

この時点でAqoursが目に入ってきました。さすがです。

当日は生憎の雨でしたが気合いを入れて聖地巡礼開始です。

 

プラサヴェルデ

沼津駅北口から徒歩3分のところにプラサヴェルデという施設があります。会議用のオフィスルームなんかがあるらしくこの日は日本胃癌学会とかいう看板が立ってました。

ここはサンシャインアニメ2期の聖地ですね。またプラサヴェルデの前には善子が犬を拾った場所もありました。雨が降っててむしろ良かった?

 

サンシャインカフェ

沼津駅南口に回るとサンシャインカフェがあります。浦の星女学院の教室をイメージした店内でAqoursのキャラクターをイメージしたメニューなどが食べられます。

 Saint Snowのイメージドリンクなんかもあったり店内で劇場版の挿入歌が流れていたりとどこを見てもラブライブな空間でした。オタク全開って感じ。花丸イメージのパンケーキを食べました。

外装もAqoursを全面に押し出していて目立ってました。

 

マンホール

あと噂のマンホールも見てきました。

 今回見つけたのはこれだけでしたが他にもあるようなのでまたの機会に探したいですね。

これらのマンホールは商店街の中にあったのですが商店街を歩く中でもAqoursのメンバーが色々なところに見られました。街をあげてAqoursを応援している感じがしました。

 

感想

以上で聖地巡礼終了です。ほんとはこのあと海を見に行ったりしたんですがすっかり暗くなってしまっていました。

今回の聖地巡礼では雨が降っていたり午後からだったので十分な時間がとれなかったりと心残りが多かった気がします。また落ち着いて時間がとれるときにリベンジしたいです。次はもっとちゃんと下調べして準備した上で巡礼したい…

でも商店街の雰囲気を味わえたりマンホールを見られたり見たかったものが見られたのは嬉しかったです。駅の観光案内所にAqoursのポスターや土産屋にぬいぐるみがあって応援されているなと感じました。そういやのっぽパン買った。

 美味しかったです。

最後に沼津駅南口の装飾の写真を載せておきます。

 余談ですがこの写真撮るのめっちゃ苦労したんですよ…車が被って…

夜に来たおかげでこれが見られたと思うと午後から巡礼というのも悪くなかったですね。

数物セミナー第19回合同合宿に参加しました

数物セミナー様の合宿に参加させていただきました。今回はその参加記です。

 

数物セミナーと合同合宿について

数物セミナーは全国の数学・物理が好きな学部生が学生主体で運営している自主ゼミ団体です。主な活動は談話会という講演会と年2回の合同合宿で今回は後者に参加してきました。合同合宿への参加は今回で3回目になりますが毎回レベルが高くていい刺激になっています。まわりが数学物理の話をしている人ばかりの空間というのはなかなかの非日常体験ですね。数物セミナー様のより詳しい情報は以下の公式ホームページを参照ください。

physmathseminar.web.fc2.com

 

リレーセミナー

数理論理学班で参加しました。本当に様相論理ができるとは思ってなかったのでびっくりしながら予習してました。セミナー前半では久しぶりに述語論理に真面目に触れましたがエルブランの定理などをやってめちゃめちゃ楽しかったです。後半の様相論理もクリプキモデルやシーケント計算に触れられました。完全性定理の証明がカバーしきれなかったのは少し心残りですね。

 

特別講演

今回は3つの特別講演を聞きました。印象に残っているのは巨大数の話ですね。クヌースの矢印やアッカーマン関数などの話をまとまって聞くのは初めてだった気がします。原始再帰的関数とかの再帰理論なんかはどこかでちゃんと勉強しなければなという気持ちになりました。

あと実数の話も面白かったですね。導入がうまかったのが印象的です。順序体の定義とコーシー完備性とアルキメデス性の紹介でした。別の場所で順序体や付値体については藤崎『体とガロア理論』に載っているらしいということを知ったので読んでみたいです。

 

夜ゼミ

2日目と3日目の夜には夜ゼミがありました。色々な自由発表がゲリラ的に行われていて楽しかったです。

2日目の夜ゼミでは主に圏論2班の延長リレーセミナーで米田の補題を証明しているのを覗いてました。すぐ裏でも別の人が米田の補題を示していたりそもそもその前のリレーセミナーの時間に圏論1班が米田の補題を示していたり進捗部屋でも米田の補題を示していたり今回の合宿では至るところで米田の補題が示されていた気がします。

3日目の夜ゼミでは一様空間について話しました。簡単な布教と自分の理解の整理のためです。わりと聞いてくれる人が集まってくれてありがたかったです。内容としては一様空間の定義からはじめて一様連続写像を定義し距離空間のときの諸々の性質が一般の一様空間でいえるぜみたいな紹介をしたあと後半で一様空間のハウスドルフ化と完備化、コンパクト性の話をしました。なんかこのブログのどこかで一様空間のpdfを書いて上げますみたいなことを書いた気がするんですがそれについては鋭意製作中ですので今しばらくお待ちください。

 

感想

今回も非常に楽しい4日間でした。今までやってきた数学の見直しやこれからやりたい数学などが見つかって有意義な経験になったと思います。とりあえず圏論と体論と可換環論やりたい…

自分は今年で学部卒業なので合宿参加は今回で最後になりますが今後もこのような学外交流のイベントには参加していきたいですね。

今回の合宿の運営をしてくださった数物セミナーの会員の方々、ありがとうございました。

 

合宿のあと行った場所については次の記事に書きます。

pdfまとめ

ブログ内で上げたり上げなかったりしたpdfをまとめておきます。随時追加していきます。

  

位相空間上のフィルターの収束

タイトル通り位相空間上のフィルターの収束についてまとめたpdfです。仮定知識は位相空間論程度でチコノフの定理までまとめています。

 

数理論理学入門入門・古典一階命題論理

基礎論の布教用に書いた数理論理学の入門pdfです。仮定知識は素朴集合論程度で完全性定理までまとめています。

 

ネットの収束と位相空間

位相空間におけるネットについてまとめたpdfです。仮定知識は位相空間論とフィルターの理論でハウスドルフ性・コンパクト性の特徴づけまでまとめています。

[2019/4/29追記]定理1.10の証明中に誤植がありましたので訂正しました。

 

ブール代数を用いた完全性定理の証明

ブール代数を用いた完全性定理の証明についてまとめたpdfです。仮定知識は一応とくにないですが初歩的な数理論理学とブール代数を知っていることが望ましいです。

 

関数列の収束について

関数空間の一様コーシー列が収束することを証明したpdfです。仮定知識は初歩的な線形代数、解析、位相空間論です。線形代数はノルム空間の定義程度、解析は一様収束と実数の連続性程度です。

 

集合の双対

集合の圏と完備アトミックブール代数の圏の圏同値を示しました。仮定知識は基本的な順序集合、ブール代数圏論です。

[2021/7/8追記]実はだいぶ前に教えてもらったんですがこの結果は一般化されたストーン双対定理の一部だそうです。

 

ド・ラームの定理

ド・ラームの定理の証明の概要を書きました。多様体論(微分形式と外微分程度),ベクトル解析(ストークスの定理程度),ホモロジー論(ホモロジー群,コホモロジー群と鎖写像の定義程度)は仮定してます。いずれ補題の証明まで補完したものを書きたいです。

 

Sorgenfrey直線について

Sorgenfrey直線の可分性と第1可算性と第2可算でないことを証明した1ページのビラです.位相空間論の知識だけで読めます.Sorgenfrey直線って名称でこの空間が載ってる本を見たことない気がするんですがどこが出典なんでしょう.

 

一様空間

一様空間の入門pdf,というか自分が勉強した内容をまとめたものです。仮定知識は位相空間論とフィルターの収束,あと直接議論には出てこないですが距離空間。一部でネットの収束と圏論も仮定しています。その他の話題で述べた部分もいずれ勉強したいです。

 

位相群のハウスドルフ性について

位相群のハウスドルフ化とそれがもたらす随伴についてまとめたpdfです。仮定知識は群論位相空間論,圏論の初歩です。一部で一様空間の基本知識も仮定してます。こういう随伴はいろんなところで出てくる気がしますね。

 

線形代数におけるHodge *-作用素

線形代数レベルのHodge *-作用素について勉強したことをまとめたpdfです。仮定知識は線形代数外積代数です。あと群の作用も少し出てきます。いずれこれを書き足して外積代数入門pdfみたいなのをまとめるとかいう構想があったらいいな。

[2019/9/13追記]定義3.1の主張中に誤植があったので訂正しました。 

 

距離空間のコンパクト性・点列コンパクト性

距離空間でコンパクトと点列コンパクトが同値になるという事実について整理したpdfです。仮定知識は位相空間距離空間の基本的な定義とあと導出図が軽く読めるとよいです。最後のとこはノリで書いたんですがわりと見やすいのではと思ってたり。

 

Rieszの表現定理の自然性

Rieszの表現定理は自然同型として解釈できるというのを示しました。仮定知識は基本的な関数解析圏論。随伴作用素っていうくらいだし随伴だと思うことってできないんですかね。

 

S^nのコホモロジー

球面S^nコホモロジーの計算方法を練習がてらまとめたpdfです。基本的なホモロジーコホモロジーの知識と完全列については仮定してます。コホモロジーがスラスラ計算できるようになりたい。

 

双対Lie代数について

双対リー代数を定義してリー代数の双対であることを証明しています。仮定知識は外積代数と初歩的な圏論です。リー代数コホモロジーなどにも触れてた方が読みやすいですね。

 

Mayer-Vietoris完全系列

多様体上のド・ラームコホモロジーに関するマイヤーヴィートリス完全系列の証明をまとめたpdfです。仮定知識はド・ラームコホモロジー程度。こういうの手を動かさないとわかんないですよね。

 

蛇の補題とコホモロジー長完全列

アーベル圏で蛇の補題コホモロジー長完全列を加群に埋め込まずに示しています。仮定知識はアーベル圏の基本的な計算。共著で自分はコホモロジー長完全列の証明の部分を担当しました。

 

トポスの像分解と随伴

トポスの射の像分解とそれが誘導する随伴についてまとめました。仮定知識は極限などの基本的な圏論の計算です。トポスについては定義から書いてますが少しトポスの計算に慣れてた方がいいかもしれません。いやあんまり関係ないか…?

 

圏論的論理学

トポスを用いた型付き論理の意味論の構成について勉強したことをまとめました。仮定知識は極限・随伴・カルテシアン閉圏の定義程度の圏論です。数理論理学もちょっと知ってた方がいいかも。だんだん論理体系やトポスの構造を膨らませていって色々なCategorical Logicに触れたいですね。

 

直観主義論理とHeyting代数

古典論理からBool代数を構成するのを参考に直観主義論理のリンデンバウム代数を構成してそれがHeyting代数であることを示すというMath Advend Calendar 2020の寄稿記事です。仮定知識は一応ほぼなしということになってますが数理論理と束の計算にある程度慣れてるのが望ましいです。

 

特異ホモロジーとHurewiczの定理

特異ホモロジーの定義、その位相不変性をみたあとHurewiczの定理の1次の場合の証明をまとめたpdfです。仮定知識は位相空間論と基本群の基礎的な知識です。加群の言葉も多少使ってます。このpdfは今後も不定期に更新していくつもりです。

 

 

モナド

モナドについて勉強したときのまとめノートです。内容はモナドとT代数の定義、Eilenberg-Moore圏と自由忘却随伴、Beckモナド性定理の証明などです。仮定知識は通常の圏論、例については簡単な代数程度。HoCAとかもっとちゃんと読んだ方がいい?

 

トポスの有限余完備性

トポスの有限余完備性について勉強したときのノートです。基本的な圏論の知識があれば一応読めますがモナドについてはこのpdf内ではFactにしています。

 

指標群の構成

ポントリャーギン双対の勉強で作ったpdfその1。位相群の指標群の構成とその性質の証明、ポントリャーギン双対定理の主張を述べるとこまでまとめました。仮定知識は位相空間と群です。コンパクト開位相とネットの収束については付録で載せてます。なんでだろう。

 

コンパクト群vs離散群

ポントリャーギン双対の勉強で作ったpdfその2。ポントリャーギン双対の特殊ケースであるコンパクト位相群と離散位相群の間の双対性について証明しました。仮定知識は位相空間論、群論、測度論、群の表現論です。コンパクト群の表現論とかいつかもっとちゃんと勉強したい。

 

実数体の自己双対性 

ポントリャーギン双対の勉強で作ったpdfその3。フーリエ変換に深く関連する \mathbb{R}の自己双対性について証明したpdfです。仮定知識は位相空間論と群論です。関数解析って難しい。

擬距離とハウスドルフ

お久しぶりですちょーさんです。先月はバタバタしていて更新できませんでした。

最近、ずっと卒研の合間を縫って一様空間の勉強をしています。前の記事でもチラッと言ってたように位相群に触れてモチベーションが出てきたので勉強し始めたのですが、やってみると思ったより難しかった…半月くらいでさくっと終わらせるつもりが気がついたら10月が終わってました。自分の数学力を過信していましたね。ただ苦労した分収穫もありました。そこで今回は一様空間を勉強する中で気が付いたことを書いていこうと思います。近況報告おわり。

 

擬距離の定義

さて、一様空間などと言いましたが今回はそう難しい話はするつもりはなくて、擬距離から入る位相についてごく簡単な事実の話をします。

まず、距離空間の定義は次の通りでした。

 写像 d\colon X \times X \to X が3条件

 (1) d(x,y)=0 \Leftrightarrow x=y

 (2) d(x,y)=d(y,x)

 (3) d(x,z)\leq d(x,y)+d(y,z)

 を満たすとき dX 上の距離関数といい (X,d)距離空間という.

 普通は(1)にさらに正値性 d(x,y)\geq 0 を課すことが多いですが、これは実はこれらの公理から証明できるので今回はこれを定義とします。

擬距離とは距離の公理のうち(1)を弱めて\Rightarrowを除いたものになります。

 写像 d\colon X \times X \to X が3条件

 (1) d(x,x)=0

 (2) d(x,y)=d(y,x)

 (3) d(x,z)\leq d(x,y)+d(y,z)

 を満たすとき dX 上の擬距離といい (X,d) を擬距離空間という.

 擬距離空間というのかは知りませんが一応距離空間に合わせて今回はこう定義することにしておきます。

これでも正値性 d(x,y)\geq0 は同様に証明できます。距離空間のときと違うのは異なる2点でも距離が0になりうることです。

擬距離による位相

擬距離があれば位相が入ります。入れ方は距離のときと同じです。

 d\colon X \times X \to X が擬距離のとき

  U\subset X\colonopen \Leftrightarrow \forall x\in U\ \exists \varepsilon \gt 0\ B(x,\varepsilon)\subset U

 としてX上の位相が定まる.ただしx\in X\varepsilon\gt0について     

  B(x,\varepsilon)=\{y\in X\mid d(x,y)\lt\varepsilon\}

 これが位相を定めることも距離空間の場合とまったく同様に示せます。

擬距離の位相についても色々な性質が成り立ったり成り立たなかったりするのですが今回はあまり深くは立ち入りません(というか深く立ち入る場面はたぶんあまりないです)。

ただ、擬距離の位相的性質について次の定理が成り立ちます。これが今回のmain theoremです。

 定理  (X,d)を擬距離空間とするとき,以下は同値である.

  (1)\ (X,d)ハウスドルフ空間である.

  (2)\ dは距離関数である.つまり d(x,y)=0\Rightarrow x=y が成り立つ.

 proof)(1)\Rightarrow(2)を示す.d(x,y)=0 となる点 x,y\in X をとる.もし x\neq y ならハウスドルフ性よりある \varepsilon\gt0があってB(x,\varepsilon)\cap B(y,\varepsilon)=\emptyset となることがいえるがこれは明らかに d(x,y)=0 に矛盾する.よってx=y

(2)\Rightarrow(1)については相異なる2点x,y\in Xについて\varepsilon=\frac{1}{2}d(x,y)\gt0とおけばB(x,\varepsilon),B(y,\varepsilon)は開集合で

x\in B(x,\varepsilon)\ ,\ y\in B(y,\varepsilon)\ ,\ B(x,\varepsilon)\cap B(y,\varepsilon)=\emptyset

となる.

(証明終)

この定理によれば距離と擬距離の差はまさに位相空間としてハウスドルフか否かの差であり、距離の公理のd(x,y)=0\Rightarrow x=yというのはハウスドルフ性を主張しているんだと思えます。距離の定義にこれを入れるというのは距離空間ではハウスドルフ性が本質なのかなぁという気持ちです。

さらに言えば、擬距離が与えられたとき空間Xd(x,y)=0という同値関係で割って距離空間にすることができます。これは位相空間論でいえばコルモゴロフ商、一様空間論でいえばハウスドルフ化の操作をしていることになります。つまりd(x,y)=0となるときx=yとみなすことにするとハウスドルフ空間になるわけです。

まとめと次回予告

というわけで、距離空間はハウスドルフな擬距離空間として特徴づけられることを紹介しました。なぜこれを一様空間の勉強中に気づいたかというと、擬距離の入った空間は自然に一様空間になります。さらに一様空間はある意味で擬距離を使って特徴づけられます。そんな感じで一様空間は擬距離と密接な関係があるわけですが、一様空間におけるハウスドルフの特徴づけを見ていてこれに思い至りました。先に少し触れたように一様空間にはハウスドルフ化(付随するハウスドルフ空間)というのがあり、これがちょうど定理の主張を満たすようにしていると思えます。

一様空間についてはやっと勉強がひと段落つきそうな目処が立ってきたので近々pdfにでもまとめようかと思います。次回の更新はそれになりますかね。乞うご期待(?)ください。

第6回ReMakers合宿に参加しました

前回の数研合宿に引き続き立命館大学自然科学ゼミ団体ReMakers様主催の合宿に参加させていただきました。ので今回の投稿も合宿の感想です。

 

 

ReMakersとReMakers合宿について

最初に今回の合宿とこれを主催してくれたReMakersという団体について簡単に紹介しておきます。

自然科学ゼミ団体ReMakersは立命館大学の数学・物理・その他自然科学分野に興味のある学生たちによる自主ゼミ団体で、「学問の交差点」を目標に活動しています。

そんなReMakersの活動のひとつが年に2回行われるReMakers合宿になります。実はこの合宿には僕は初回から参加させてもらっていて毎回楽しませてもらっています。今回でこの合宿も6回目ということで感慨深いですね。

 

合宿の内容としては

1.リレーセミナー

2.特別講演

の2つの活動が主になります。1のリレーセミナーではいくつかの班に分かれて班ごとに決めた分野のセミナーをします。僕は今回は位相群班で参加させてもらいました。また2の特別講演では今回は4つの講演がありどれも面白かったです。僕も特別講演として位相幾何学の話をさせてもらいました。数研合宿でも話したアレですね。

以下、それぞれの感想を述べていきます。

 

リレーセミナー

前述のとおり位相群をやりました。色々あって(進捗はなくて)全然進めませんでしたが非常に面白かったです。セミナー中はずっと位相群つよいしか言ってなかったような気がします。位相群めちゃ楽しいということがわかりましたしおそらく今後自分の専門にも必要になるので位相群の勉強は続けていきたいです。あと位相群を少しかじったこのタイミングで前から勉強しようと思っていた一様空間についてもやっていこうかという気持ちになりました。このあたりはまとまった進捗が出たらまたまとめてこのブログにも上げようかと思います。

それと、初日にちょっとしたアクシデント(?)がありまして昼過ぎまでセミナーができなかったため他の班のセミナーの様子を見学したりもしました。今回のReMakers合宿では前回までなかった情報系と生物系の班があり、普段触れない分野なので新鮮でした。

 

特別講演

今回の特別講演は自分を含めて4つありました。統計データを次元圧縮する話や某ラノベで人気のレールガンを作る話や微分方程式を用いて体内時計などの生物の生活リズムを記述する話などどれも興味深い講演で面白かったです。そう思うと自分の講演ってフワッとしたことしか言ってないし全然大した話してないな…

ちなみに僕の講演の内容は数研合宿のときとほぼ同じで「位相幾何学のススメ」です。応用例の部分はまるっと差し替えて合宿参加者層に合わせて物理・情報・生物分野での応用を紹介しました。

また特別講演とは別に夜ゼミでの自由発表の時間もありこちらも面白かったです。僕は作用素環論と物理的解釈の話と楽譜の読み方の話を聞いたのですが、他にも量子カオスの話やブラックホールの話や座屈と呼ばれる現象の話など色々やっていたみたいです。聞けなかったやつも面白そうだ。

 

まとめ

位相群に触れられて、位相幾何学の布教もできて、他の色々な分野の話も聞けて非常に有意義で楽しい合宿でした。ReMakersもだんだん色んな分野の人が集まってきて「学問の交差点」っぽくなってきたなぁと思いました。できれば次回の合宿にも何らかの形で参加したいと思う次第です。ちなみにこのReMakers合宿の様子はTwitterハッシュタグ #RM_sum6th で実況されていたので気になった方は検索してみてください。

 

ReMakers関係者の皆様ありがとうございました。

数研合宿に参加しました

8/31~9/1に開催された立命館大学数学研究会主催の合宿(以下数研合宿)に参加させて頂きました。またこの数研合宿内で「位相幾何学のススメ」というタイトルで講演をさせて頂きました。ので今回は簡単に感想でも書こうかと思います。

 

数研合宿について

数研合宿は2日間で計8人の方がそれぞれ自由なテーマで講演をするという催しでした。

有り難いことにこの講演者のうちの1人として数研幹部の方からお声掛けいただきちょーさんが講演をするという運びとなりました。

他の方々の講演も関数解析などのピュアマスから力学系・プログラミング・超弦理論など色々な分野の話題が聞けて楽しかったです。

なお数研合宿の様子はハッシュタグ #Rits数研合宿 で実況されていたので気になる人は覗いてみてください。

 

自分の講演について

位相幾何学のススメ」ということで位相幾何学についてよく知らない人向けにふんわりと位相幾何学を紹介するという講演をしました。ざっくりした内容としては同相ってのがあるんだよ~というのと不変量というのを考えるよ~という話でした。

位相幾何学と言いながら位相空間論の知識を仮定しないというのはなかなかぶっ飛んだ試みでしたが、結果的には多くの人に「位相幾何学面白そう」というようなことを言ってもらえているようでよかったです。自分の専門に興味を持って貰えるのは嬉しいですね。

ちなみに、今度の9/19~21に開催される立命館自然科学ゼミ団体Remakers様の合宿でもほぼ同じ内容の講演を一部差し替えて話す予定なので暇な人はよければ聞きにきてくれればと思います。

 

最後に、数研合宿を企画・運営してくれた数学研究会幹部の方々ありがとうございました。

位相空間とネット

お久しぶりですちょーさんです。

最近院試勉強をしていたらネットの概念に少し触れたので今回はネットについて少し語ろうと思います。ネット自体については他にも詳しくまとめてくれている方々が何人かいるようなのでここでは深く立ち入らず,位相空間論においてネットがどう便利なのかを書いていこうと思います。証明も一部省略してfactとします。

仮定知識は位相空間論とフィルターです。フィルターについては以前にpdfにまとめて記事にも書いてあります

cho-san.hatenablog.jpここにまとめた程度の知識があれば今回は大丈夫です。

 

ネット

ネットは点列の一般化です。フィルターも一般化ですがネットはより直接的な一般化で点列はネットの一種です。まずはネットとその周りの基本的概念を定義します。

ネットの定義

点列は\mathbb{N}を添字集合とする族ですがネットではこの添字集合を一般化します。この添字集合にあたるのが有向集合の概念です。

 定義(有向集合)

  空でない集合I上の前順序\leqが条件

  (有向性)\forall i,j\in I\ \exists k\in I\hspace{1.0em}i\leq k\ ,\ j\leq k

  を満たすとき(I,\leq)を有向集合(directed set)という.

つまり有向集合とは任意の2元に上界が存在する前順序集合のことです。有向集合を前順序ではなく順序として定義することもあります。

全順序集合は有向集合です(maxがとれるので)。従って\mathbb{N}は有向集合であり,有向集合は\mathbb{N}の一般化だと思えます。

例 \mathfrak{F}X上のフィルターとする.\mathfrak{F}上の関係\leq

F_1\leq F_2\Leftrightarrow F_1\supset F_2

  とすると(\mathfrak{F},\leq)は有向集合である.

以下,関係記号を省略して有向集合Iと書き有向集合の前順序を\leqで書きます。

有向集合を添字とする点の族としてネットを定義します。

 定義(ネット)

  Xは集合でIは有向集合とする.写像x\colon I\to XXのネット(net)という.

 ネットは有向点族と訳されることもあります。ネットx\colon I\to Xを点列のときと同様に(x_i)_{i\in I}などと書きます。

ネットの添字集合に有向性を仮定するのはあとで位相空間のネットに収束を定義するときに”十分先の方”では比較できてほしいからという気持ちです。半順序では弱すぎる、けど全順序は強すぎる。その間をとった形になります。

 

部分ネットと普遍ネット

この時点でネットの収束の定義もまあ予想がつくだろうと思いますが、位相空間のネットに入る前にもう少しだけ一般のネットについて概念を定義しておきます。

点列では部分列という概念があり点列コンパクト性やボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理なんかで重要になるのでした。そこでネットにも部分ネットという概念を定義しましょう。部分ネットの概念はいくつかあるようですが今回は次のように定義します。

 定義(部分ネット)

  (x_i)_{i\in I}Xのネットとする.有向集合J写像h\colon J\to Iが2条件

  (単調性)\forall i,j\in J\hspace{1em}i\leq j\Rightarrow h(i)\leq h(j)

  (共終性)\forall i\in I\ \exists j\in J\hspace{1em}i\leq h(j)

  を満たすときXのネット\left(x_{h(j)}\right)_{j\in J}(x_i)_{i\in I}の部分ネット(subnet)という.

部分列のときと比べるとやや対応がわかりづらい定義です。気分としては\left(x_{h(j)}\right)_{j\in J}では(x_i)_{i\in I}の”一部分”をとってきているので部分ネットという感じです。実際任意の単調単射\mathbb{N}\to\mathbb{N}は共終性を満たします。

ここで注意してほしいのは添字集合がIからJにまるっきり変わっていることです。点列のときには部分列をとっても添字集合は\mathbb{N}のままでしたが一般のネットではこれが全く別の有向集合に変わります。

また部分ネットに共終性を仮定するのも初めて見る人には分かりにくいかもしれません。共終性というのはつまり非有界性なので点列で言えば点列の有限部分集合を部分列とは呼ばないよねみたいな感じです。

 

ネットに関する概念としてもうひとつ重要なものに普遍ネットというものがあります。

 定義(普遍ネット)

  Xのネット(x_i)_{i\in I}が条件

  \ \forall A\subset X\ \exists i_0\in I\hspace{1em}(\forall i\in I\ \ i_0\leq i\Rightarrow x_i\in A)or(\forall i\in I\ \ i_0\leq i\Rightarrow x_i\in A^c)

  を満たすとき(x_i)_{i\in I}を普遍ネット(universal net)という.

普遍ネットは点列でイメージするのは難しいですが、フィルターで考えるとわかりやすいです。ズバリ普遍ネットとはフィルターでいうウルトラフィルターのことになります。普遍ネットの条件はフィルター\mathfrak{F}がウルトラフィルターであることの同値条件

\forall A\subset X\hspace{1em}A\in\mathfrak{F}\ or\ A^c\in\mathfrak{F}

に対応しています。そのため普遍ネットのことをウルトラネット(ultranet)と呼ぶこともあります。またこの条件は完全性とよばれるので普遍ネットを完全有向点族とも呼びます。

 \mathfrak{F}X上のウルトラフィルターで写像\ x\colon\mathfrak{F}\to X\mathfrak{F}の選択関数,つまり

\forall F\in\mathfrak{F}\hspace{1em}x(F)\in F

  とする.このとき(x_F)_{F\in\mathfrak{F}}は普遍ネットである.

 

次の定理はネットに関して非常に重要な事実です。

 定理(普遍部分ネットの存在)

  任意のネットは普遍部分ネットをもつ.

普遍部分ネットとは普遍ネットであるような部分ネットのことです。この定理の証明は少し長くなるので今回は省略します。証明は細かい部分でテクニカルな作業が必要になりますが本質的には拡大ウルトラフィルターの存在によります。

 

位相空間のネット

ネットの基本的な定義を終えたところでいよいよ位相空間のネットについてみていきます。

ネットの収束

位相空間のネットには収束が定義できます。

 定義(ネットの収束)

  X位相空間(x_i)_{i\in I}Xのネットとする.点x\in Xについて

  \forall N\in\mathfrak{N}(x)\ \exists i_0\in I\ \forall i\in I\hspace{1em}i_0\leq i\Rightarrow x_i\in N

  となるとき(x_i)_{i\in I}xに収束するという.

点列の収束と同じ定義です。性質も点列とある程度同じように、例えば次の定理がなり立ちます。

 命題

  X位相空間(x_i)_{i\in I}Xのネット,\left(x_{h(j)}\right)_{j\in J}をその部分ネットとする.

  (x_i)_{i\in I}が点x\in Xに収束すれば\left(x_{h(j)}\right)_{j\in J}xに収束する.

(証明)任意のN\in\mathfrak{N}(x)についてあるi_0\in Iがあって

\forall i\in I\hspace{1em}i_0\leq i\Rightarrow x_i\in N 

となる.共終性よりj_0\in Jがあってi_0\leq h(j_0)となるが,このとき

\forall j\in J\hspace{1em}j_0\leq j\Rightarrow x_{h(j)}\in N

となる.■

つまり収束点は部分ネットに遺伝します。ただしこの証明の中で共終性を使っていることに注意しましょう(共終性がなければこれは成り立ちません)。

点列ではなくネットで考えることの利点は点列では一般に成り立たない命題がネットで考えると成り立つことです。フィルターと同じですね。例えば次が成り立ちます。

 命題  X位相空間x\in X\ ,\ A\subset Xとする.以下は同値.

   (1) x\in\overline{A}

   (2) xに収束するAのネットが存在する

(証明)(1)\Rightarrow(2)について、ネットx\colon\mathfrak{N}(x)\to Xを選択関数

\forall N\in\mathfrak{N}(x)\hspace{1em}x(N)\in N\cap A

とすると(x_N)_{N\in\mathfrak{N}(x)}xに収束するAのネットである.

(2)\Rightarrow(1)について、xに収束するAのネット(x_i)_{i\in I}があれば

\forall N\in\mathfrak{N}(x)\ \exists i\in I\hspace{1em}x_i\in N\cap A

なのでxAの触点である.■

 

ハウスドルフとコンパクト

ネットを用いてハウスドルフ空間とコンパクト空間が特徴づけられます。このあたりもフィルターと同じですね。まずはハウスドルフ空間からいきましょう。

 定理

  X位相空間とする.以下は同値.

  (1)Xハウスドルフ空間

  (2)Xの任意のネットは収束すれば一意

(証明)(1)\Rightarrow(2)について、ネット(x_i)_{i\in I}が点x,y\in Xに収束しているとする.もしx\neq yとすると,

\forall N\in\mathfrak{N}(x)\ \forall M\in\mathfrak{N}(y)\ \exists i\in I\hspace{1em}x_i\in N\cap M

となるのでハウスドルフ空間という仮定に反する.よってx=y

(2)\Rightarrow(1)について、x\neq yとする.もしこれらが開集合で分離できないとすると,

\mathfrak{N}(x)\cup\mathfrak{N}(y)\subset\mathfrak{F}

となるフィルター\mathfrak{F}が存在する.この\mathfrak{F}の選択関数によるネット(x_F)_{F\in\mathfrak{F}}x,yの両方に収束する.これは仮定に反する.■

このネットによるハウスドルフ空間の特徴づけはまさに点列の一般化です。ハウスドルフ空間では点列収束の一意性は成り立ちますが逆は成り立ちません。これを点列からネットに広げると逆が成り立つわけです。

 

コンパクト空間についても同様の特徴づけができます。こちらはフィルターによる特徴づけも参考にしてください。

 定理

  X位相空間とする.以下は同値.

  (1)Xはコンパクト空間

  (2)Xの任意の普遍ネットは収束する

  (3)Xの任意のネットは収束部分ネットをもつ

(証明)(1)\Rightarrow(2)\Rightarrow(3)\Rightarrow(1)の順に示す.

(1)\Rightarrow(2)について、(x_i)_{i\in I}Xの普遍ネットとする.各i\in Iごとに

S(i)=\{x_j\mid i\leq j\}

とおくと\{S(i)\mid i\in I\}は有限交叉性をもつのでXのコンパクト性より

\displaystyle x\in\bigcap_{i\in I}\overline{S(i)}

がとれる.このとき任意のN\in\mathfrak{N}(x)について普遍ネットの定義からi_0\in Iがとれて

(\forall i\in I\ \ i_0\leq i\Rightarrow x_i\in N)or(\forall i\in I\ \ i_0\leq i\Rightarrow x_i\in N^c)

となるがxの取り方から前者であることがいえるので(x_i)_{i\in I}xに収束していることがわかる.

(2)\Rightarrow(3)については普遍部分ネットの存在から直ちにわかる.

(3)\Rightarrow(1)について、\mathfrak{F}Xのウルトラフィルターとする.\mathfrak{F}の選択関数によるネット(x_F)_{F\in\mathfrak{F}}は普遍ネットである.(x_F)_{F\in\mathfrak{F}}の収束部分ネット\left(x_{h(i)}\right)_{i\in I}をとりその収束点をx\in Xとする.

このとき任意のN\in\mathfrak{N}(x)について普遍ネットの定義からF_0\in\mathfrak{F}をとれば

\forall F\in\mathfrak{F}\ \ F_0\supset F\Rightarrow x_F\in N

が部分ネットの共終性と収束よりいえる.とくに任意のF\in\mathfrak{F}についてx_{F_0\cap F}\in N\cap Fである.\mathfrak{F}はウルトラフィルターなのでN\in\mathfrak{F}となる.

故に\mathfrak{N}(x)\subset\mathfrak{F}なので\mathfrak{F}は収束することがわかった.任意のウルトラフィルターが収束するのでXはコンパクトである.■

これも(3)の条件は点列コンパクト性の一般化になっています。(2)の条件はウルトラフィルターの収束の類似です。まとめると、ネットによる特徴づけは

ハウスドルフ\Leftrightarrow収束が一意
 コンパクト\Leftrightarrow収束部分ネットが存在

となります。

 

ネットを用いた証明

本記事はネットの便利さを紹介する記事だったはずなので実際にネットの便利さがわかる証明をしてみたいと思います。

 命題  ハウスドルフ空間のコンパクト集合は閉集合

非常に有名な命題です。これをネットを用いて証明してみます。

(証明)Xハウスドルフ空間とし\ A\subset Xをコンパクト集合とする.x\in\overline{A}とするとxに収束するAのネット(x_i)_{i\in I}が存在する.Aはコンパクトなのであるy\in Aに収束する部分ネット\left(x_{h(j)}\right)_{j\in J}が存在する.また収束点は部分ネットに遺伝するので\left(x_{h(j)}\right)_{j\in J}xにも収束する.Xはハウスドルフなので収束の一意性からx=y\in Aとなる.よってA閉集合

開被覆を用いた証明よりも直感的ですっきりした証明になったかと思います。

 命題  コンパクト空間の閉集合はコンパクト.

これも有名ですね。この命題もネットで示してみましょう。

(証明)Xハウスドルフ空間とし\ A\subset X閉集合とする.Aの任意のネット(x_i)_{i\in I}Xのコンパクト性よりあるx\in Xに収束する部分ネット\left(x_{h(j)}\right)_{j\in J}をもつ.しかしA閉集合なのでx\in Aである.よってAの任意のネットがAに収束する部分ネットをもつのでAはコンパクトである.■

この命題は開被覆による証明も簡潔ですがこの証明もかなり簡潔でわかりやすいものになっています。

 命題  Xはコンパクト空間でY位相空間とする.

   Yへの射影p_Y\colon X\times Y\to Y,p(x,y)=yは閉写像である.

これもそこそこ有名なやつです。この命題のネットを用いた証明には次の事実を使います。

 命題  X,Y位相空間f\colon X\to Y写像とする.以下は同値.

 (1)fは連続

 (2)Xのネット(x_i)_{i\in I}xに収束すればYのネット(f(x_i))_{i\in I}f(x)に収束する

この命題の証明もそう難しくはないのですが今回は認めることとします。この命題自体も点列連続の類似になっています。

(証明)A\subset X\times Y閉集合としてp_Y(A)\subset Y閉集合であることを示す.

y\in \overline{p_Y(A)}をとる.するとyに収束するp_Y(A)のネット(y_i)_{i\in I}が存在する.各i\in Iごとにy_i\in p_Y(A)なのでx_i\in Xがとれて(x_i,y_i)\in Aとなる.

Xはコンパクトなのであるx\in Xに収束する(x_i)_{i\in I}の部分ネット\left(x_{h(j)}\right)_{j\in J}がとれる.収束点は部分ネットに遺伝するので\left(y_{h(j)}\right)_{j\in J}yに収束し,X\times Yのネット\left((x_{h(j)},y_{h(j)})\right)_{j\in J}(x,y)に収束する.A閉集合なので(x,y)\in Aであり,y=p_Y(x,y)\in p_Y(A)がわかる.よってp_Y(A)閉集合である.■

これも開被覆を構成する証明よりかは直感的な証明になっているのではないかと思います。

 

ここまでで3つほどネットを用いた証明の例を見てきましたがより直感的で簡潔な証明になっていることが見て取れたかと思います。このようにネットを用いると閉集合やコンパクトといった概念を扱うのが楽になります。もっと勉強してネットやフィルターを使いこなせるようになりたいものです。

まあよく考えたら幾何学徒として多様体なんかを扱っている分には点列で十分なんですが…第1可算なので…

 

[追記]

以上の内容(ネットの定義~ハウスドルフ性・コンパクト性)をpdfにまとめました。ブログでは飛ばした普遍部分ネットの存在の証明なども補っています。

 

本当はフィルターとネットの対応などについて書こうかと思ったのですが疲れたので(あと自分の勉強不足で)それはまた今度にしようと思います。